青山祐子アナの育休連発後の退職騒動について思うこと
元NHKアナウンサーの青山祐子さんが7年間産休育休を繰り返したのち、職場復帰することなく退社、そしてイベントの司会を努めるということで批判があるようです。
いつもの男性育休報道への意見提起とは少し違いますが、いい機会なのでこれを今日は考えてみたいと思います。
まずはソースから。
カンタンな問いから考えてみる
とはいっても、これは何も法は犯してないので、そんなに難しい問題ではないと思います。
そのためには、まずカンタンな問いから考えてみましょう。
その問いはこちら。
あなたが同じように子ども4人を授かり、産休育休を繰り返したのであれば、どのような事情があろうとも絶対に職場復帰すると誓えるか?
です。
これにYESなら青山アナを批判すればいいし、NOやわからないなら批判する権利はないでしょう。
しかし思うに、これに自信を持ってYESって言える人、ほとんどいなくないですか。
つまり、自分でもやりかねないにも関わらず、人がやっているのは気に食わないというだけなんじゃないかと思いますけどね。
特に社会保障というのは、平たく言えば"みんなで助け合おう"という仕組みなので、誰かが助けられているということは、誰かがそれを負担しているという構図になっています。
そういう意味では、助けられる側ならほぼその権利を放棄することはしないし、逆に負担する側なら不満に思うという、ただのポジショントークでしかないケースが極めて多い気がします。
まぁアナウンサーという人に見られる立場でやっていいことかどうか?という批判があるのかもしれないですけど、それこそ青山アナが自分で判断すべきことであって、自分が良いなら良いってだけですよね。
以上で僕の意見は終了なのですが、まぁもう少しだけ。
もう少しだけ分解してみる
この問題って最初に書いたとおり法を犯していない以上、道義的な問題なわけです。
法は犯してないからといって、モラル的にどうなんだー!
法の趣旨に照らしておかしい!
お前みたいなやつのせいでどうたらこうたらー。
ってわけです。
こういう問題を見たときに、いつも僕が引き合いに出すもの、それはふるさと納税です。
青山アナを批判する傍らで、返礼品目当てでふるさと納税しているやつって意外にいるんですよ。
法の精神に照らして行動しろというなら、ふるさと納税も心からその町のこと考えて納税してなきゃ筋が通らないですよね。
ところがどっこい。
実際は返礼品のキックバック率を見比べて納税先を選んでるやつばっかりじゃないですか。
そのせいで川崎市みたいに大減収している都市も出てきているわけです。
というわけで、返礼品目当てでふるさと納税しているやつも青山アナを批判できないでしょう。
こういう風に法の趣旨と、実際の運用の間にはギャップがあって、個人としての利益の最大化の行動が法の趣旨には合わないということはよくあるわけですね。
これは法だけではない
これは何も法だけに限らず民間サービスも同じです。
たとえば吉野家で特盛1つ頼むより、並2つのほうが安くて多い時代ありましたよね。
そのほかにも大学のときの近くのハンバーグ屋がごはん小だと20円引きのお店があったんです。
ところが、ごはんおかわり無料だったから、みんなごはん小にしておかわりしまくるわけですよ。
こんなの京大生みんなやってました。
これってお店がいっぱい食べてほしいとか、そんなに食べない人のために始めたサービスが本来の趣旨とは違う形で利用されている例だと思います。
じゃ、そんな頼み方しているやつが非難されるべきかといったらそうでもないですよね。
だってそういうルールにしてあるんだもん。
権利とモラルは切り離して考えるべき
これらの問題で僕の意見はこうです。
権利はルールの範囲内である限りは当然誰にも邪魔されずに使えるべきです。
モラル的にどうなのか?とは切り離されるべきです。
モラル的にどうか?は本人が良いならやればいいです。
僕はそう考えてます。
ですが、みんながそんなモラル違反したら制度自体が立ち行かなくなるじゃないか、という意見があるでしょう。
いわゆるモラルハザードですね。
それは当然起こりえます。
現に上に書いた川崎市みたいな大減収しているところもあるわけですよ。
でもそれってルール違反にしていない制度自体の問題だと思うんですよね。
仮にそういうやつばっかり増えて破綻が起きそうならルール改定すればいいんですよ。
実際ふるさと納税も返礼品の上限ルールとか、罰則規定ができているじゃないですか。
この産休育休連発後に帰ってこないのも看過できない問題なら、たとえば戻ってこなかったら育休の手当全額返納とか、(たぶんムリだけど)次の仕事への制約つければいい話です。
なので、仮に産休育休連発後に帰ってこないのがおかしいと思うなら、文句を言う先は青山アナではなくルール設定した厚生労働省ですよ。
法に照らしてと言うけれど
法に照らしてどうなんだ、これももう少し丁寧に見たほうがいいと思います。
今回で言う"法に照らして"とは、本来育児休業法においては復帰を前提に休業を認めているのが法の趣旨だということでしょう。
しかし、もっと言えば厚生労働省、というか国が育児休業法を制定した目的って、そんなミクロな話ではなくて単純に人口減少を抑制したいというのが一番でしょう。
そういう意味では、こういう産休育休連発後に帰ってこない人を許容するルールを維持するのと、禁止するのとではどちらが人口減少を抑制できるかという観点で評価すべきことだと思います。
ちなみに僕は産休育休連発後に帰ってこないといけないルールで縛ったら安心して休めない人のほうが多くて人口減少する気がするので、別にこのままでいいと思います。
いずれにせよどちらのルールにしたって、そのルールのスキマでモラル違反する人は出てくるわけだから、その人に目くじら立てたってあまり意味がないという考えです。
うーん。
なんか新型コロナのクルーズ船にしたってそうですけど、確かにクルーズ船の中に監禁したことで、乗客に感染者が蔓延したのは事実です。
しかし、まず論点にすべきはクルーズ船を隔離したことによって日本本土への感染が抑制されたかってことであって、その上でクルーズ船の中の感染抑制が最大化されていたかという議論の仕方にすべきですよね。
わざとかどうか知らないですが、前者の議論をほったらかして、クルーズ船に監禁されて感染して死んだとかいう報道ばっかりしててても意味ないですよね。
青山祐子さんに自分が思うこと
というわけで自分は青山アナの選択は別に共感はしないですが、批判するのもおかしいかなと思います。
ただし、アナウンサーという仕事が分別のある人ばかりを相手にする仕事ではない(むしろ分別ない人ばかりを相手にしている仕事とすら言える)わけだから、それをご自身がどう評価したのかってことくらいですかね。
しかし育休への偏見がここにもあると思う
この関連の記事で気になる文章がありました。
産休中の17年には青山アナが45歳の誕生日を迎え、タレント・神田うのが開いたクリスマスパーティーに参加した際はネットが炎上した。神田のブログでセレブ感あふれるパーティーの様子が伝えられ、
「産休育休を取ることはいいけど、なんでこんな神経を逆なですることをするのだろう。メディアに携わる人間なのだから、世間にどう見られているかもう少し敏感になった方がいい」
え?育休中ってプライベートゼロで育児だけやっとけってことなんですかね。
別にプライベートと両立してよくないですか。
ダメだというなら、働くおっさんはワークライフバランスとか言わずにずっと働けよ。
あと、NHK退職後にイベントの司会を受けたことに対してこの反応
久々の復帰となったわけだが、ネット上は「法的には問題ないだろうけど、道義的にどうなのかね」
これもフルタイムでNHKの仕事はできないけど、単発のイベントは受けられるっておかしいとは思えないですけど。
むしろ可能な範囲で働こうとしているいい選択だと思います。
というわけで、そんなに僕は目くじら立てる問題ではないと思うし、それよりかは育休への偏見のほうを改めたほうがいいんじゃないかと思いました。
ついついオピニオン記事だと熱くなってしまうズボライターでした。